ポジティブ・イミテーション
神奈川県横須賀市, Japan
- Architekten
- 邸宅巣箱 / 早坂直貴+斧田裕太+中村一翔
- Standort
- 神奈川県横須賀市, Japan
- Jahr
- 2022
イミテーショナルな素材には、「使わざるをえなかった」という弁明が付き纏うのはなぜだろう。圧倒的なクオリティまで昇華した模造品をみるとき、むしろその背後にある製造者の企業努力や技術力が透けてみえて、感動することはないだろうか。イミテーションを素直に肯定することでデザインの可能性を開くこと。本作はその実践である。
敷地は134号線の海岸通りに位置する。オーシャンビューを求めて北欧風、西欧風、和風と有象無象の別荘が建ち連なり、これ以上ないイミテーショナルな風景を為している。
その風景と地続きになるように、イミテーショナルな崖ボリュームをつくる。このクローズなボリュームには水まわりなど裏方の生活機能が納められている。一方でその崖の上には、表の生活機能であるLDKを擁したオープンな平屋を載せた。この崖上からは眼下に素晴らしい海景を体験できる。イミテーショナルな存在の上で、人間の暮らしは豊かになるという図式である。
そして素材選びにもイミテーションを積極的に採用した。崖にはジョリパットを、デッキには樹脂を、畳にはボロンを用いている。こういった人工素材はメンテナンス性に優れて、概して生活に利便性をもたらす。
このように現代人の生活は間違いなくイミテーションの上に成り立ち、それは現代テクノロジーの結晶としてある種の美点を備えている。イミテーションを素直に肯定することで、デザインにもより多くの可能性が開かれるのではないだろうか。
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