写真 © Toshiyuki Yano
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L/C

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場所
広島県, 日本
2021

【ロードサイドシティの慣用配置を再定義する】
広島県東広島市の中心部からほど離れた幹線道路沿いに、2000㎡を越えるオフィスと商業機能を兼ね備えた複合施設LC(ライフスタイルカルチャーマーケット)を建築する計画です。敷地周辺は田園地帯は残るもののロードサイドシティ化が進み、LCが建築されることでますます人の流れが活性化することが予測されます。周辺にはない大規模な建築となれば少なからず街並みに影響を与えることになるため、商業優先ではない地域との関わり方がテーマのひとつとして考えられました。ロードサイドシティに見られる傾向としては、道路沿いに大きな看板を立て、ゆとりある駐車スペースをとり、その奥に建物が建つという配置計画がほとんどです。LCは駐車スペースを建物の裏となるスペースに配置したことが大きく異なる点であり、さらに道路に沿ってゆとりある緑地スペースを配置したことが、これからの街並みづくりのひとつのロールモデルとなるのではと考えました。緑地スペースは屋外での様々なイベントの開催や街の公園ともなり、人々の賑わいが街並みに溢れ出す場となります。このような場がロードサイドに連続していくことで他のロードサイドシティにはない魅力が生まれるのではと考えています。
木造在来工法で建てる意義
LCのオフィス機能は、注文住宅の設計施工を総合的に扱う企業がクライアントであるため、自社で建築することが建物のブランディングや誇りにつながり、本計画に望ましいのではと考えました。となれば住宅を建てる職人達でも建設可能な工法で、クライアント自らが大規模建築を建設していただきたいという思いから、CLT工法などの最新技術ではなく木造在来工法を採用することが決まりました。つまり、事務所、展示場及び物販店舗からなる3階建の特殊建築物を木造在来工法で建て、かつ木造表現として一部の構造を現しとするという計画です。これは法的要求を緩和できる『学校』を除く特殊建築物としては、過去に前例のない試みであり、実現には困難を極めました。
まず2000㎡を越える特殊建築物を木造でかつ一部構造現しとするためには、防火要件を「その他建築物」とする必要があり、自立する防火壁(1時間耐火構造)により1000㎡以内ごとに区画する必要があります。そのため緑地スペースを囲うように配置したL型の平面を、中央棟をA棟としてその西側をB棟、南側をC棟として3つの棟に分割することで対応しました。さらに敷地の周辺環境は美しい山並みに囲まれているため、山並みのラインと合わせるようにB棟、C棟の屋根勾配を決定しています。結果として、大規模な建築でありながら住宅の要素も感じられる、住環境を扱う社屋にふさわしい外形となりました。この両片流れの大屋根の勾配は2019年に施行された木材利用の推進項目にある、最高高さの限度が16mまでに拡張されたことを活用して設定しています。
LCの上棟時は住宅を扱う職人達が大勢集まり、大規模の木造を自分達でつくりあげたいという思いを持って作業される光景は、最新技術が活用された現場とは異なる難しさと、何より力強さを感じることができました。改めて職人の技術の素晴らしさを感じるとともに、家具メーカーや住設ショールーム、ガーデンショップやギャラリーが併設された社屋によって、この地域に様々な賑わいが生まれ、街全体の活性化につながり、地域の方々やこの街を訪れる方々に愛着を持っていただけるような建物になることを期待しています。

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