山手町の家Ⅲ
プロジェクト一覧に戻る- 場所
- 兵庫, 日本
- 年
- 2015
大正期に開発された山手町は、芦屋川や六甲山に近く、南傾斜地に建つ家々からは大阪湾を見渡すことのできる。この地は芦屋を代表する風光明媚な街並みが広がり、成熟した文化を感じさせる地域である。
当該計画地の東西は隣地住宅に囲まれているが、南面には様々な植栽が植えられた隣地の庭が広がり、その先には山手町ならではの景色が広がる。そのような環境を最大限活かすことを基本に計画は進んだ。
ファサードは白い壁を基調にしつつ、2枚の杉型枠コンクリート打放しの壁を配置している。杉型枠仕上げとすることで、無機質なコンクリートの表面に木の優しさと暖かさを加えることで、街並みに貢献することができ、かつ建物全体に奥行きと変化を与えている。
エントランスは杉型枠仕上げに沿って、足元にある植栽の通路を歩いた先にある。あえて距離を取ることで、ゆったりと緑を楽しみながら静かで安らかな住まいへと導かれる。
内部は、全体に平滑なディテールとし、ライムストーンや漆喰壁・オークフローリングなど素材のもつ質感を感じられる空間を目指した。玄関はプライバシーを守りつつ、緑とつながりをもたせ、面積以上の広がりをもった開放的な人を迎えるギャラリー空間とした。住まいの中心となるリビング・ダイニングは家族が自然に集まれるよう中央に配置し、南側のコーナーには、片引きの大きな木製サッシがあり、全開放すればテラス・庭と一体につながった開放的な場となる。他にも庭を望む開放的な浴室、個を重視しつつもデッキでつながったロケーションのいい主寝室など、住まい手をやさしく包み込んでくれる場をつくり出している。
住まい手は、この地で時の流れと共に安らぎと憩いのある至福の人生を楽しみ、この建築・風景と共に時を重ね家族の記憶に刻まれていくことであろう。