那珂川市博多南駅前ビル(ナカイチ)外壁・内部リニューアル

福岡県那珂川市, 日本
写真 © Yousuke Harigane
写真 © Yousuke Harigane
写真 © Yousuke Harigane
写真 © Yousuke Harigane
建築家
スピングラス・アーキテクツ
場所
福岡県那珂川市, 日本
2018

博多南駅は博多駅から新幹線で一駅、乗降者数12,000人/日を超える那珂川町の玄関口である。駅に隣接する町所有の博多南駅前ビルは2004年に完成、駅と直結する2階レベルには広々とした人工地盤(博多南駅前公園)があり、1階にはバスターミナルが隣接する恵まれた環境にありながら、建物内部の利用者は非常に少ない状態であった。課題は利用用途が不明瞭であったことと、立ち寄りたくなる空間的魅力が欠けていたこと、そして駅や人工地盤との関係が築けていないことであった。

町は、外壁や屋根の大規模修繕に加え建物の内部も大きく改修することを決定、もっと多くの町民に利用してもらえるまちづくり拠点をつくることを目指した。そこで我々はコンセプトを「交換と祝祭の場、ナカイチ」とし、市場のように賑わいのある施設につくり替えるデザインに着手した。

古今東西、市(いち)には多くの人が集い、物だけでなく情報を交換する場所であり、芸や技を披露する賑やかな祝祭空間であった。また目的無くとも訪れる、現代でいうサードプレイスでもあっただろう。そういう場に生まれ変わるにはハードだけでなく利用の内容やスタイルを再設定する必要があった。町は改修に先立って、外部に委託し2年前からさまざまなイベントを通して利用の試行を重ねていたため、それを取り込むかたちでデザインを進めることができた。このようなプロセスは他でも参考になるものである。

我々は4階建のフロアのそれぞれに、異なる「市」のテーマを与えてコントラストを付けた。予算の事情からもできるだけ既存を再利用しつつ、町民に「変わった」と受け止めてもらえるよう、場に適切な色彩やサインなどにも気を配った。西側全面のガラスのカーテンウォールには遮熱断熱フィルムを貼って省エネルギーを図っている。駅側の外壁の塗装には遠景から建物がシンボリックで立体的に見えるような配慮、駅に繋がるブリッジの塗り直しにもゲート性を持たせ駅ビルへのアプローチを強調する工夫を施すなど、周辺全体の景観の向上を行った。

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