西予市宇和第2駐車場

日本
建築家
齊藤正 轂工房
2017

敷地は国の重要伝統的建造物群保存地区(重伝建)に指定されている、『宇和文化の里』の入り口にある。住民の方とワークショップを行いながら計画を進め、植栽は西予市に自生している樹種の中から選択した。また舗装には芝ブロックを使用し、車が乗り入れることのできる芝敷きの駐車場とした。
同時に、老朽化していたトイレの建替えを行った。この西予市宇和町卯之町伝統的建造物群保存地区では、町並み保存の手引きとして建築のレギュレーションが策定されており、今回もこのレギュレーションに合わせて設計・施工した。「伝統木造工法」「チャート石による基礎工法」「持ち送り」「土壁漆喰」など、いくつかのレギュレーションがあり、一部現行の建築基準法と矛盾のあるものも存在するが、構造実験などを経てクリアしながら、より町並みに近いものが完成した。

[持ち送り]
持ち送りは、卯之町では「ひじ」と呼ばれ、この重伝建地区を代表する重要なデザイン要素である。各町家には軒を支えるように持ち送りがついており、独自のデザインであることも面白い。本プロジェクトでも、この建物独自の持ち送りをデザインした。ここでは、西予市明浜町に伝わる以下のような鯨伝説をモチーフとした。
『天保の飢饉のとき。明浜では不漁が続き、明浜を離れ、他の地に移り住む者もでてきた。そんなある日、1頭のクジラが明浜に打ち上げられ、そのクジラを皆で食べ分け、危機をのりきった。その鯨は殿様級の戒名がつけられるほど親しみ崇められている。』
この伝説をモチーフに持ち送りをデザインしたのは、鯨がまちを離れる人たちをくい止めたことになぞらえている。

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