半島の家
関東, 日本
- 建筑师
- マウントフジアーキテクツスタジオ
- 位置
- 関東, 日本
- 年份
- 2018
土地を建築する
二つの行為で建築はできている。一つは“フレーム”を土地に立てること。もう一つはその“土地”そのものを操作、もしくは作り出すことだ。
木造や鉄骨造は前者に、RC造や組積造は後者へとそれぞれ属していて、たとえば木で住宅を作ることを考えれば分かり易い。上部構造は言うまでもなくフレームを立てることだし、下部のRC基礎部は強固で湿度の低い状態への土地の操作だと言える。比率の差こそあれ、その二種類の成分が建築を成り立たせているのである。今を生きる生命体である私たちは、フレームに対しては、いずれ朽ち倒れるものであるからこそ、その立ち上がっているという“現在性”に共感して価値を見出し、逆に土地に対しては、時の経過を越えて生存を良好に保障する“永続性”を希求しているのだろう。建築的に“土地”を扱おうとするとき、時間を越えて良き暮らしを約束する“基盤的質”のようなものを生み出そうとする意思が、常にそこにはある。
半島の先端、東に大洋に面するこの敷地で私たちが考えたことは、純粋に“土地”として建築を捉えきることである。季節や時間毎に階調豊かに、時には劇的に変化する海や半島の岩山からなる“無垢の自然”には強い魅力があるが、しかしその反面、半島先端であるがゆえに周囲を遮るものもなく、しばしば強風や大波に曝される荒々しい土地柄は脅威でもあり、ここでは"フレーム"は心もとない。求めるべきは、この土地の魅力は拡張し、その脅威は低減する建築的“地形”の創出であると考えた。しかし同時に、味わいかつ畏怖すべき“無垢なる自然”に対して導入する人為的操作は、最小限に留めるべきでもある。
まず、半島の岩山を削り出したかのようなコンクートの直方体w30×d17×h11mを用意する(針葉樹製の型枠は、“斜状葉理”とよばれるこの土地に特徴的なパターンに合わせ、斜めに設置された)。これを海側東辺に沿って配置し、南東上部角からw23×d11×h7mの負のボリュームで削り取ることで、GL+4,000の高く掲げあげられた「地平」を生み出して高潮から逃れ、同時に、冬には居住域を北西からの季節風から守り、夏は南東からの海風を受け止める「L字のブロック」を作り出す(北西に広がる工業地帯の風景もこれによってトリミングされる)。そのウィングに内包される空間は遠く東に広がる水平線と対峙し、南からの陽光を受け取ることにもなるだろう。
ここまでは、ある種リーズナブルな建築的な地形の形成のプロセスだ。そこに私たちが唯一、意思(“恣意”と言ってもらってもいい)によって導入するのは、北東方向へと切り上がる“斜めのスリット”である。
それはL字のボリュームをくぐり、空と海洋へと放たれ上昇するように人々を誘う大階段である。この特別な角度を持った最初の動線の投げ出しが、空間の外・内を滑らかに移動し、最後の建築的半島である富士を眺めるルーフテラスに終わるシークエンスを生み出した。地形的操作によって得られた全ての風景や環境の特徴要素、さらには周囲との関係性は、導入された一本の斜めの線に始まるシークエンスによって、境界なく調和した全体へと統合されるだろう。 建築的に“土地”を作り出し、これに一本の特別な線をひくことで、“永続的な人間の居場所”を生み出したのだと、考えている。
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