神崎郡の家

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場所
奈良, 日本
2009

若い夫婦と子供の住居と、別棟で施主自身が営む会社の事務所を建てる計画であった。敷地は姫路市から北に30分ほど車を走らせた位置であり、古くから水田が広がるのどかな風景の一角である。
稲穂の波に浮かぶ木船のような・・・、大地に根を張る大木のような・・・、そんなイメージを敷地から受けながら計画されたプランは、広い敷地と周辺環境を活かし、市街地では難しい外に開く住宅であった。所要室を用途別に振り分けられた長方形の箱を、余白を作りつつ並べ、塀によって動線を仕切り、大屋根を乗せるという単純なる構成は、水平方向への広がりを生み出し、人の心を大地へと近づけ、より大地の雄大さを感じさせることとなった。さらに長いアプローチを経て辿り着く玄関を、周囲より高くすることにより、人の動線に高低差をつけ、各部屋に向かって「下りていく」という行為を負荷することにより、大地に向かってリラックスする場へと帰るという安心感を生み出すのである。各部屋にそれぞれ違った指向性を持たせたまま、デッキやガーデン、中庭、長い塀などを繋げることにより、広がりを持たせつつ、視線の交錯を調整している。
事務所と住宅ひとつのデザインとしつつ、ある程度距離をとった別棟とする事でけじめをつけ、この距離感さえも水平の広がりとして感じれるようアプローチで繋いだ。事務所は、余計なものは一切作りこまず、山の稜線を切り取るハイサイド窓と、わずかばかりの人の気配を知らせてくれる地窓が広さとプライバシーをもたらしてくれる。

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